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鳴沢夫妻がまた茫然と黙り込んだ。
それを言えたなら考えると無表情の男に突きつけられ、その答えを彼が望むままに自分たちの口から言うことを迫られる。それが言えるのか。自分たちが遣り過ごした『罪』を言えるのか。寿々花も固唾を飲む。
言えない鳴沢夫妻を見て、父がため息をついて口を挟んだ。
「結婚、息子との出会う瞬間、父親としての生活、信頼、プライド、安らぐ家庭、かな。あ、名付けもそちらで勝手にされたんですよね~。それから~、部隊でも男の面目丸つぶれ。これほどの男が実は子持ちで未婚だから、根も葉もない噂を立てられて、平然としている精神も鍛えられちゃったりしてね。うーん、こんな目に遭わされて、もう一度愛し合えるのかなあ。私だったら嫌だなあ……。そんな嫁も婿も二度と戻って来てほしくないなあ……」
うわ、この父親、ほんとうに容赦ない狸だよと娘としても震え上がる。
「将補、それ以上は――」
父が全部言っては、鳴沢夫妻が発言できなくなると思ったのか彼が止めた。
だが言えるはずもないのだ。他人でも見えている罪なのに、この人たちには見えていなくて、自分たちがしたことだなんて認めたくないのだ。そんな罪を口にすることは罪を認めること、その上で、また娘と愛しあってくれと言える自分たちの図太さが、どれだけ非常識であることも痛感してしまうことだろう。
「金銭的にお困りですか。でしたら、養育費を三年分だけ一括でお支払いします。それで少しはまとまった金が手に入るでしょう。それでなんとかしてください。ただし向こう三年分だけです。その一括支払いの後は毎月とボーナス月の送金はストップさせていただきます」
鳴沢夫妻がまた慌てた顔を揃ってあげた。
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