1.育ての父親

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 事情を知っているマスターがさっそくオーダーを取りに来てくれる。  鳴沢パパはコーヒー、マスターが幼児が好みそうなものをいくつかあげると『ちいさなパフェ』と拓人が答える。  そこで今回の対面をするために打ち合わせていたとおりに、まずは寿々花が拓人に話しかける。 「拓人君。あそこにいるおじさん、誰かわかるかな」  窓の向こうにいる両親へと指さす。拓人は誰だかわからないようだった。 「小さな犬と遊んでいる人?」 「うん。あそこにいるおじさんね。拓人君が自衛隊のお祭りの時に会った、おっきな部隊の隊長さんね」  やっと拓人が思い出したようにして、身体全体でハッとしてくれた。 「コンビニでお土産買いなさいっておこづかいくれた『りょだんちょ』。しょうほって人」 「そう。お姉さんのパパなの。一緒に居るのはお姉さんのママと、うちのワンちゃん」 「あの犬、お姉ちゃんのおうちの犬なの」 「うん。ヨキっていうの。拓人君は『たっくん』と呼ばれているでしょう。ヨキは『よっ君』って呼ばれているの。一緒に遊びたい?」  またキラキラな目を見せてくれ『うん』と元気いっぱいわくわくした仕草をみせてくれる。 「じゃあ、パフェができるまで遊んでみようか」  ふたりの男性に目配せをして、寿々花が拓人の手を握って連れ出す。  そのタイミングを計っていただろう父と母も気がついて、カフェの入り口まで迎えに来てくれた。  ひさしぶりに会う『しょうほ』が私服でただのおじさんだったにも関わらず、正面で対面すると拓人も『ほんとだ。しょうほだったんだ』とすぐに思い出してくれたようだった。
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