2.操れない男

6/6
前へ
/196ページ
次へ
 将馬から婚約者を奪った男という過去はまだ飲み込めないが、将馬が考えていることと隔たりはないようで、そこは安心できそうだった。 「では。岳人さんと私の考えが一致していると思ってもよろしいですか」 「はい。俺は当分、結婚なんてごめんなので。拓人を少しずつ、あなたにお返しするために力になりたい。婚約者を奪った男として、また父親という権利を奪った男として、せめて償いさせてください」 「覚悟を決められたということで、よろしいですか」 「はい。館野さんに協力いたします」  血の繋がりがある父と育ての父がタッグを組んだ瞬間だった。 「親権は私が持ちます。当分の間の監護権を岳人さんにお任せしたいと思っています。それを勝ち取る手続きを弁護士を通して行います。あちらが放棄しているなら大丈夫かと考えていますが慎重に。養育費は今後は弁護士を通して岳人さんに支払います」 「わかりました。俺のこと、パパと信じているうちはいまのままにしておきたいです。ですが、成長をするにつれて、館野さんが本当の父で育てるために力になってくれていたことを伝えられる準備をしていきます」  まだ五歳の男の子なのに。子供にとって最大の味方であろう母親から離れて大丈夫なのかと寿々花は案じていたのだが。  将馬からは『自分の思い通りにならないことは、冷酷に排除できる女だとわかったから遠慮はしない。もう拓人にも興味がなくなったのだろう』と聞かされたので、気にしないようにしている。  彼女のことを配慮しない状態で、父親同士で話が進んでいく。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1275人が本棚に入れています
本棚に追加