3.パパのおともだち

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 いまだからこそ将馬は振りかえる。『俺も息子のためだけに生きることで、二度と傷つきたくないと頑なに殻にこもりすぎていたし、でも見捨てた父親という気持ちになりたくなくて、養育費を届けていたんだと思う』と。  目が覚めたいまの彼は『犠牲になって甘んじていることが、逆に鳴沢家にとっては良くない影響を与えていたのかもしれない』と思い始めたそうだ。今後は自分本位になることを優先し、鳴沢家に対し厳しい姿勢で臨む方針に変えるのだと、意識を強めていた。  だから彼の心は、もう揺らがない。自分と息子のために前を向き始めている。  彼の作戦もだいたい筋書きが固まっている。今度はそれを父親同士で再確認をしていく。  将馬が『甘んじすぎていた』ことのひとつが『養育費』。  そこについては岳人パパも案じていることがあるよう。 「今後、懸念していることですが、俺の稼ぎもなくなって、館野さんからの援助もなくなったら、アイツ、ずっと専業主婦だから収入源がなくなるので暮らせなくなると思うんです。特に館野さんからの養育費は、一般的平均額より多めでしたよね。ボーナス時も多かったので、まるで自分がボーナスをもらうみたいに、妻はうきうきしていましたからね」  自衛官の男が身を挺して稼いでいるものを、拓人のためのものだと諭すことにも苦労があったと岳人パパが顔をしかめ教えてくれる。  そのような『許せない感覚』が諸々露見し、徐々に積み重なって、いまの有様になったと彼が苦悶の様相を見せた。 「ですから今後も、絶対に働かないと思いますよ。そうすると、俺の稼ぎを手放さないために離婚をごねて、養育費をもらうだけのために拓人を手元において、俺たちから金だけ取ろうと言い出すかもしれない」
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