3.パパのおともだち

4/8

1267人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
 しばし、感慨深さを噛みしめる男ふたり、黙ってコーヒーを味わいひと息ついている。  やがて。ふたりの視線は、また枯れ葉舞う外にいる息子へ。  父と母とヨキとたわむれる姿に、秋の木漏れ日が注がれている。 「そちらの寿々花さんとご結婚されるのですか」  岳人パパの問いに、将馬が少し照れを見せる。 「そのつもりですが、拓人のことが落ち着いてからと考えています。陸将補も彼女も承知しています」 「そうですか――。おめでとうございます。あなたには誰よりもしあわせになってほしいです。でしたら、あそこで拓人と遊んでくださっているご両親は、新しいお祖父ちゃんとお祖母ちゃんになるってことですね」 「そうですね。なので、今日、一緒に会いに来てくれました」 「大丈夫そうですね。拓人も……。陸将補までなられた方ですから安心です」  将馬との付き合いを父は許してくれた。館野は男としては申し分はない。ただ、館野には『切るには苦労がある縁を持っている』。それをお前も一緒に背負っていけるのか――と聞かれた。  寿々花も覚悟はできている。館野一尉が鋭利な冷たさを放っていた孤独を見せつけられ、突きつけられ、それでも寿々花は彼の崇高な精神に惹かれていった。彼のそばで少しでも力になりたいと強く思った。彼が寿々花をそばにと望んでくれてからは、彼が歩んできた過去に怖じ気づく気持ちなどなかった。  母もおなじで、寿々花の女性としての気持ちに気がついていたと言い、『でも、寿々花が決めたことならば見守りますよ』と言ってくれた。  それならば。館野が婿になるのなら、拓人君は我が家の孫にもなる。父も母もその覚悟を決めると言ってくれたのだ。  だから今日もついてきてくれた。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1267人が本棚に入れています
本棚に追加