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しばし、感慨深さを噛みしめる男ふたり、黙ってコーヒーを味わいひと息ついている。
やがて。ふたりの視線は、また枯れ葉舞う外にいる息子へ。
父と母とヨキとたわむれる姿に、秋の木漏れ日が注がれている。
「そちらの寿々花さんとご結婚されるのですか」
岳人パパの問いに、将馬が少し照れを見せる。
「そのつもりですが、拓人のことが落ち着いてからと考えています。陸将補も彼女も承知しています」
「そうですか――。おめでとうございます。あなたには誰よりもしあわせになってほしいです。でしたら、あそこで拓人と遊んでくださっているご両親は、新しいお祖父ちゃんとお祖母ちゃんになるってことですね」
「そうですね。なので、今日、一緒に会いに来てくれました」
「大丈夫そうですね。拓人も……。陸将補までなられた方ですから安心です」
将馬との付き合いを父は許してくれた。館野は男としては申し分はない。ただ、館野には『切るには苦労がある縁を持っている』。それをお前も一緒に背負っていけるのか――と聞かれた。
寿々花も覚悟はできている。館野一尉が鋭利な冷たさを放っていた孤独を見せつけられ、突きつけられ、それでも寿々花は彼の崇高な精神に惹かれていった。彼のそばで少しでも力になりたいと強く思った。彼が寿々花をそばにと望んでくれてからは、彼が歩んできた過去に怖じ気づく気持ちなどなかった。
母もおなじで、寿々花の女性としての気持ちに気がついていたと言い、『でも、寿々花が決めたことならば見守りますよ』と言ってくれた。
それならば。館野が婿になるのなら、拓人君は我が家の孫にもなる。父も母もその覚悟を決めると言ってくれたのだ。
だから今日もついてきてくれた。
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