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それに、だ。
どうせきっと、あのネギ女も山芋女もーー「合コン」になんて誘われたことも、ましてや行ったこともないだろう。
それもまた、考えてみれば痛快だ。
……ふん。ざまあみろ。
あんな人たちには、どうせ「合コン」なんて、一生縁などないのだ。
だったら、もう出会うことはかなわないにせよ、これも一つの、あの人たちに対するリベンジ、ってことに、なるのかもしれない。
……まあそれもでも、もうどうでもいいことだ。
結局、私はミキちゃんへ向けて、その合コンに参加します、というメッセージを送ることにした。
送信する前に、ふと思い立って、真美に一緒に来ないか、とラインしてみた。一人では少し心許なかったからだけど、彼氏ができたばかりでどうかとも思っていると、ものの一分も経たずに速攻でOKの返事がきた。
ミキちゃんに快諾の返信をすると、間もなくして日時とお店のURLが返ってきた。場所は、恵比寿。
そのメッセージの最後に、
……アッコちゃんが初対面の、同じ派遣の女の子を一人、連れていきます。かわいい子だよ。
とあった。
……私が初対面。
いったい誰だろう、と思った。
まあとにかくいずれにせよ、これをきっかけに、きっとまた、すべてが日常に復するだろう。
私は、その日が来るのを心待ちにした。
そしてそれがーーすべての本当の始まり、だったのだ。
■
例によって蒸し暑い、七月の東京の、真夏の夜だった。
山手線の恵比寿駅で、真美と待ち合わせすると、それから二人でいそいそと、ミキちゃん合コンのお店に向かった。
週末のはなきん、ということもあって、当然人出も多い。
恵比寿という街には、正直あんまり、なじみがない。最近ほんと、お茶や買い物は二子玉ばっかりなので。真美にもニコタマダムになるのはまだ早い、とかって言われてる。
合コンの開かれるそのお店は、ちょっと小洒落たような、今風の創作和食のお店だった。当然、来るのは初めてだ。
入ってみると、中の雰囲気も悪くなく、静かで落ち着いた、ラグジュアリーで和な、大人の空間。
「合コン」ってなると、まず女性陣は例外なく、壁際の席に自動的に「陳列」されーー向かい合った男性陣が、内心舌なめずりしつつ見定めを始める、みたいな状況を、自分は勝手に想像して警戒してしまうことが多い。
でも、いざ来てみるとそんなこともなかった。五分入りくらいの店内の、四人がけのテーブル二つに、男女まぜこぜになって座った。
天井も高くて開放的。明るすぎず暗すぎず、といった室内照明が、軽くソワソワしてるような参加メンバーを包み込んでいた。
女性は、私と真美、それと幹事のミキちゃんと、例の初対面の、全身黒づくめのおかっぱの子だった。
本来は三対三の予定だったのが、私が急遽真美を誘ったので、四対四に修正してくれたのらしい。
その真美は、ラインした当初から、この日を楽しみにしていた。聞くと今度の夏休みに行くディズニーシーのデートの、彼氏の段取りが甘いことに、なんだか不満を覚えているのらしい。
ちょっと派手ではあるけど、髪もきれいに栗色に染め直してて、毛先のカールもバッチリ決まってる。花柄のワンピも似合ってて、明らかに目立つ。
ミキちゃんも、とてもきれいな子だ。この中では一番年上で、そこはかとない大人の色気、というのか。グレーのシックなニットに、ネイビーのロングスカート。黒ブーツ。首元には控えめな金色のネックレスが光ってる。
私は飛ばして、最後のおかっぱの子はーーちょっとびっくりするくらいのオーバーサイズの、フリルのついた黒のワンピースを着ていた。たぶん、コムデギャルソンだろう。
似合ってはいるけど、正直一人だけ、浮いているように思った。さっきから黙って、伏目がちにお人形のようにしてる。
恐ろしく色が白くて……なんか浮世離れした「妖精」みたい、っていうのか。
ミキちゃんによると、同じ派遣会社の子で、向こうは私のことを知っている、ということだった。
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