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真剣な眼差しで見つめる。
そして、意を決したように口を開いた。
重い沈黙の後の言葉。
それは……。
俺の予想を大きく裏切るものだった。
―――ッ!? 俺は絶句する。
何故なら……
「やっぱり言うの止めるね…」
ーーええ!?
心の中で、突っ込みを入れて、わざとらしくこけたフリをする。
その方がお笑いみたいでいい気がした。だって気まずいこの状況…。
俺は、冷静な気持ちを装い聞く。
「何で止めるんだ?」「俺、ただ道を聞いただけだよね?」「嫌なら、断ってよ!」
俺は思わず少しだけきつく言う。
すると何だか彼女は、赤くなってモジモジし始めた。
「??」
そんな彼女の態度に、?がいっぱい浮かんでくる。
初対面だし、俺はここの土地勘がなく、帰りたくて、たまたま一人で歩いていた小さな女の子に訪ねたのだ。
「もしかして、不審者に見えている、俺?」
顔を指して、苦笑いする。
「うん!」「見えるよ!」
小さな女の子は、明るく元気良く答えた。
あんまりにもはっきりと言われ、俺は純粋に悪いことをしたなと思った。
ーー確かに、こんなおじさんに行きなり道聞かれたら、不審者をまずは疑うか…
ちょっと、心外だなと理不尽な気持ちをなくはないが、少女に話しかけるとこうなるのかと思い、俺は諦めた。
「ごめんね。お嬢ちゃん」「怖がらせて…」
そう言って元来た道を戻ろうと踵を返すと、少女が明るくまた言う。
「おじさん、勇者なんでしょ?」「ママとパパが村の人たちから教えてもらった、あの伝説の…」
何か訴えかけるような無邪気な声が俺の心臓を突き刺した気がした。
「え!?」
慌てて振り返ると、何故か俺の視界が真っ暗になった。
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