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物体は地面に落ちると、少しだけバウンドした後にB国軍隊長の足元に転がってきた。
B国軍隊長が足元にある物体に視線を向ける。
「……」
物体は人間の首だった。A国軍兵士の兜を着けている。兜から覗く顔にはあどけなさが残っており、年齢は十代半ばくらい。先程の爆発に巻き込まれたらしく、頬や額に破片が刺さっている。
「悪魔の親分だな、お前……」
「な!!」
A国軍兵士の首がしゃべる様子を見たB国軍隊長が、驚愕の表情を浮かべた。隊長だけではなく、周囲の兵士達も同様だ。
「『勇気』君……悔しいけど……これ以上……悪魔を倒せないよ……。僕の体……なくなっちゃった……。だから……何もできない。剣を振ることも……走ることも……できないんだよ。もちろん……故郷に帰ることもできない。生き延びて帰ることができたら……あの娘に告白しようと……思っていたんだけど……叶いそうにない。残念だけど……。でも……『勇気』君……君に会えてよかったよ……。だから、ぼくは……ここで……何も……できなくなっても……後悔は……しない……」
A国軍兵士の首がそう言い終わると、赤みを帯びていた顔から色が消えていった。
「……化け物めが」
A国軍兵士の首を見ながら、B国軍隊長が吐き捨てるようにして言った。
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