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薬の成果
ここはB国との国境付近にあるA国城内の一室。
「ふむ……」
黒いローブを身にまとった小柄な老人が、手にした水晶玉の中を覗き込んでいる。
「さすがですな、魔導士長殿」
鎧に身を包んだ巨漢が、老人、すなわち魔導士長に向かって言った。彼もまた水晶玉の中を覗き込んでいる。
水晶玉に映し出されているのは、No.4814の首。もちろん、事切れており、青白い顔をしている。
「No.4814が倒した敵兵の数は二十人。No.4814の行動による周囲の士気上昇で増えた分も考慮すると、その数は更に多くなる」
「ここまで成果が出れば御の字です」
巨漢が満足げな表情で魔導士長に言った。
「じゃが、将軍殿……」
「何か?」
「敵の隊長らしき兵士が使った手投げ式爆弾。あれは厄介じゃな。威力が高い上、しかも扱いやすい」
「魔導士長殿のおっしゃる通り、確かに厄介なものです。しかし、あれを作るには高い技術力が必要で、手間もかかるはずです。一部にしか支給されていないかと思われます」
「ふむ、確かに。じゃが、油断は禁物じゃ。あれを食らうと小隊一つが全滅しかねん」
「ごもっとも。ところで、魔導士長殿」
「何じゃ?」
「あの薬は、他にもありますかな」
「もちろん」
魔導士長が、そばにある机の引き出しを開けると、そこにはあふれんばかりの薬包があった。
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