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「こんなにたくさん……」
「試験のために、作れるだけ作った」
No.4814が飲んだ薬は、魔導士長が作ったものだった。
試験と戦力の強化を兼ねて、魔導士長から将軍、隊長を経由してNo.4814の手に渡った。
効果は筋力および反射神経、生命力の大幅な増強。痛みの大幅な緩和。気分の高揚。
副作用の一つとして幻覚症状があるが、魔導士長はこれを逆手に取り、服用者の気分が更に高揚するような幻を見れるようにした。
そんな強力な効果は丸一日続く。
だが、その後が問題で、効き目が切れると、服用者にものすごい疲労が襲い掛かり、ほとんどの場合、その場で眠ってしまい、個人差はあるが、丸一日は目が覚めない。体力がない人間の場合、最悪、死に至ることもありうる。たとえ、死に至らなくても、戦場のど真ん中で効き目が切れようものなら、その場で殺されかねない。
だから、戦い続けて欲しい優秀な兵士ではなく、そのままでは活躍が見込めなさそうな兵士を被験者に選んだ。
その一人がNo.4814だった。
薬効については、将軍はもちろん、隊長も知っているが、より下の兵士達には、恐怖が抑えられて気分が高揚する薬としか知らされていない。
知ってしまうと、捨て駒にされるのではないかと考える兵士がいる、と魔導士長や将軍達が考えたからだ。
「じゃが、被験者はNo.4814を含めても、まだまだ少ない。そこで……」
魔導士長が将軍に顔を向ける。そのまなざしには何かの期待が込められているようだ。
「お前さんにこれらを渡すから、配下の兵士を何人か被験者にして、試して欲しい」
「なんと……」
驚きの表情を浮かべる将軍。だが、その表情は嬉しそうなものに変わった。
「喜んで試しますよ、魔導士長殿」
「うむ」
将軍は大量の薬包を鞄にしまい、意気揚々として部屋から出て行った。
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