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薬を飲んだ直後のことだった。
目の前にいきなり子供が現れた。
年齢は十代前半くらい。服装や体つきから、男の子だと思うのだが、その整った顔立ちには女の子っぽいところがあり、中性的な雰囲気が漂っている。目つきは優しく、悪人には見えない。
見たところ、敵兵ではなさそうだ。
「君、こんな所にいたら危ないよ。ここは戦場だから、早く帰りな」
「早く帰りなって……、きみがぼくを呼んだんだよ」
「僕が呼んだ?」
「そうだよ。ぼくは『勇気』。きみは?」
「勇気」……だって? もしかして、隊長が言っていた「勇気がわいてくる」って、この子が現れるということなのか?
「僕はNo.4814」
「No.4814? それ、きみの本名じゃないよね」
「もちろん、僕の本名じゃない。本名はちゃんとあるんだけど、ここでは言っちゃいけないんだ」
「言っちゃいけない?」
「そういう決まりがあるんだよ。もし、それを破ろうものなら、何かしらの罰を与えられる。最悪の場合、殺されるという噂もある」
「そうか、わかった。ところで……」
「何?」
「なぜ、きみはぼくを呼んだんだい?」
「隊長から『怖気づいたら飲め』と言われていた薬を飲んだんだ。そしたら、君が現れて……」
「なるほど。それで、きみはぼくにどうして欲しいんだい?」
「この戦争を終わらせて欲しい……って、無理だよね」
「そうだね。ぼくひとりでできることじゃない」
「はは……そうだよな」
「ほかにできそうなことは?」
「生き延びたい……というのは、どうだろうか?」
「それなら、なんとかできるかもしれないね。補償はしないけど、やれるだけやってみるよ」
「本当!? よろしく頼むよ。でも、どうやって……」
「簡単さ。敵を全て殺せばいいんだよ」
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