勇気が現れた

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 僕の予想通り、戦場では、僕と同じA国の兵士達と、敵国であるB国の兵士達が、剣や(やり)等の武器をぶつけあったり、盾で防いだりしながら、せめぎあっている。  A国とB国では、盾や(よろい)等の防具に描かれている紋章が違うし、それに色や形といった防具そのもののデザインも異なる。  明るい色合いで丸みを帯びた防具を身に着けているのが、A国の兵士達。すなわち僕の仲間だ。  一方、敵であるB国の兵士達が身に着けている防具は、暗い色合いの角張ったデザインになっている。  だから、どちらの国の兵士なのか、一目でわかる。  だが、B国の兵士達の姿……  彼が言っていたことは、本当だったのか。  岩陰から出た直後に見たその姿には、目を疑った。  防具以外は黒ずくめの服装で、肌が露出しているのは顔と両手のみ。  露出している肌の色は青白く、健康な人間の肌ではない。病人どころか、もはや死人といっていいくらい、赤みがない。  口からは大きな牙が(のぞ)いており、頭には山羊みたいな角が生えている。  どう見ても悪魔だ。 「勇気」君が言った通り、B国の人間になりすましていたものが、戦いの場で本性を現したのだろう。
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