願いが叶う薬

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僕の名前は『弓弦(ゆづる)』、半年後の高校入試に向けて受験勉強を頑張っている静岡県富士宮市内の市立中学に通う3年生の男子だ。 中学校での僕の成績は決して良くなくて、1学期の中間試験と期末試験、2学期の中間試験と期末試験は、とても僕が希望する高校に合格できるような結果ではなかった。 それでも僕はあきらめずにこつこつと受験勉強を頑張っていたけれど、どうも思うように勉強がはかどらず、気持ちが焦ってばかりいる状態だった。 2学期の期末試験が終わって中学校は冬休みに入り、僕は高校入試直前のラストスパートで自宅にこもって勉強に集中していた…つもりだった。 しかし集中するどころか、何を勉強したらいいのかすらもわからなくなっていた。 新年を迎えた1月1日、僕は午後から富士宮市内にある浅間大社に初詣に行った。 僕は神様にすがるような思いで、お賽銭箱にそっと小銭を入れて手を合わせて合格祈願をした。 その後僕はバスで朝霧高原方面に向かって朝霧自然公園に足を運んだ。 何か目的があるわけではないけれど、今日は天気も良く晴天なので少し気晴らしに行くことにした。 朝霧自然公園に到着すると雄大な富士山を眺めながら公園内をぶらぶらと散歩し、少し歩き疲れたところで公園内のベンチに座って富士山を眺めていた。 僕は高校入試がどうなるのだろうかとぼーっと考えながら富士山を眺めていた。 すると僕が座ったベンチの右隣に、ステッキと黒のセカンドバックを持ってグレーのコートを着た白髪の老紳士が座って、やはり富士山を眺めているようだった。 僕は気にせずに富士山と公園の周りの景色を眺めていると、突然老紳士から話しかけられた。 「貴方は弓弦君ですね!  高校入試のことで、何か悩んでいるようですね!」 僕ははじめて会った老紳士から自分の名前を呼ばれたことに驚いた。 「なぜ僕の名前を知っているのですか?」 僕が質問すると老紳士は、 「何となくじゃよ!」 と意味不明の答えが返ってきた。
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