願いが叶う薬

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僕は充実した高校生活を送ることができて、高校3年生の夏に野球部を引退して大学に進学するための受験勉強に取り組むことになった。 どうも勉強が苦手な僕は思うように勉強がはかどらず、日が経つにつれて気持ちが焦るばかりだった。 僕自身は受験勉強に集中しているつもりだけれど、どうも頭の中が整理つかず、志望の大学への合格ラインに届かずに進学は難しい状況になっていた。 それでも僕は自分の希望の大学に入りたい強い気持ちがあって、一生懸命に勉強を続けていた。 寒さが厳しい新年を迎えた1月1日、僕は午後から富士宮市内にある浅間大社に初詣に行った。 高校受験の時にも参拝したけれど、この時の僕も高校受験の時と同じように神様にすがるような思いで、お賽銭箱にそっと小銭を入れて手を合わせて合格祈願をした。 その後僕はバスで朝霧高原方面に向かって朝霧自然公園に足を運んだ。 何か目的があるわけではないけれど、僕はどこか心の片隅に、また白髪の老紳士に会えるかもしれないという淡い期待を持っていた。 今日は天気も良く朝霧自然公園に到着すると雄大な富士山を眺めながら公園内をぶらぶらと散歩し、少し歩き疲れたところで公園内のベンチに座って富士山を眺めていた。 このベンチは、3年前高校入試に不安を持っていた僕が座った場所と同じベンチだった。 僕は大学入試がどうなるのだろうかとぼーっと考えながら富士山を眺めていた。 すると僕が座ったベンチの右隣に、3年前に出会ったステッキと黒のセカンドバックを持ってグレーのコートを着た白髪の老紳士が座って、やはり富士山を眺めているようだった。 「3年前にもお会いしたと思いますが、僕のこと覚えていますか?」 僕が声をかけると老紳士は、 「あぁ、覚えているとも…  君は弓弦君だね!」 と笑顔で僕に言葉をかけてくれた。 「今の弓弦君は、大学入試に自信がないようだね!」 老紳士の言葉に僕は、 「はい、そうなんです。」 と頷きながら答えた。
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