願いが叶う薬

8/13
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
僕は充実した大学生活を送ることができて、大学4年生の夏頃から就職活動を開始した。 僕は自動車製造会社への就職を希望していて、5社面接を受けたけれど全て不採用になってしまった。 友達は就職先が決まりつつあるのに、僕はなかなか内定をもらうことができなくて焦るばかりだった。 そうこうしているうちに冬の季節を迎えてしまい、僕は就職が決まらないまま年末年始を迎えてしまった。 新年を迎えた1月1日、僕は午後から富士宮市内にある浅間大社に初詣に行った。 高校受験と大学受験の時にも参拝したけれど、この時の僕も神様にすがるような思いで、お賽銭箱にそっと小銭を入れて手を合わせてお祈りをした。 その後僕はバスで朝霧高原方面に向かって朝霧自然公園に足を運んだ。 何か目的があるわけではないけれど、僕はまた白髪の老紳士に会いたいという強い気持ちを持っていた。 今日は天気も良く朝霧自然公園に到着すると雄大な富士山を眺めながら公園内をぶらぶらと散歩し、少し歩き疲れたところで公園内のベンチに座って富士山を眺めていた。 このベンチは、高校入試と大学入試の時に不安を持っていた僕が座った場所と同じベンチだった。 僕は就職がどうなるのだろうかとぼーっと考えながら富士山を眺めていた。 すると僕が座ったベンチの右隣に、以前出会ったステッキと黒のセカンドバックを持ってグレーのコートを着た白髪の老紳士が座って、やはり富士山を眺めているようだった。 「ご無沙汰しています。  僕のこと覚えていますか?」 僕が声をかけると老紳士は、 「もちろん、覚えているよ!  また困ったことがあるようだね!  今度は就職かね?」 と言葉をかけてくれて僕は、 「はい、そうなんです。」 と頷きながら答えた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!