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「偽の恋人って言ったって何をするんだよ?」
隣駅のカフェのスイーツセットを目の前にして俺は葉月に聞く。スイーツは思ってた以上に美味しく、頼み事を聞いてやる価値はあるなと思った。
「とりあえずたまに一緒に帰ってもらっていいですか?ついでに会社の近くでご飯食べていきましょうよ」
「それは……別にいつもと変わらないんじゃないのか?」
時折仕事が遅くなったときは飯を奢ってやってから帰っている。大したものじゃないが。
「あとは、高橋さんがいる前で話している時とかちょっと距離近めに話してもらって、あれ、こいつら付き合ってるんじゃないの?感出してください」
「無理だろ」
実際付き合ってないんだし。
「匂わせ程度でいいんで」
「何もないところには何も匂わないぞ」
「そこをなんとか。ほらっ。こっち見てください」
葉月が自分の顔に指を差して俺に見るように言う。促されるまま葉月の顔を見ると葉月も視線を合わせて、俺を見る。
「見つめ合えば恋人のように愛しく見えてきませんか?」
俺は葉月の顔をまじまじと見る。
「……全くならないね」
「あー……なんかもういいです。指示出すので、適当に合わせてやってください」
面倒くさそうに言う葉月。いやお前、それが人に頼み事する態度か?
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