プラセボの花

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 次の日、朝起きたら熱は下がっていた。前日に感じていたあの絶望感は消え去っていた。ただその代わりに別の何かが胸の中に居着いた気がする。それはまだ淡く色づいた何かでそのものの形を感じることは上手く出来なかった。 「そうだ。お礼しないとな」  熱が下がった報告がてら葉月に連絡をする。お礼は何がいいかと聞くと返ってきたのは予想外の返事だった。 ーー桜を見に行きたいんです。付き合ってもらえますか?  桜?3月初旬の今ではまだ開花宣言もされていない。 ーー桜なんてまだ咲いてないだろ? ーー河津桜ならもう咲いていますよ  河津桜……?確かに言われてみれば桜の季節より前に桜のようなピンクの花が咲いている記憶がある。桜の前に咲いているのは全部梅の花なのかと思っていたが。  桜と言う単語を聞いて、胸に淡く湧いて出てきたものがなぜだか桜の花の形に浮かび上がってきた。桜を見に行けばこの心に沸いたものの正体が分かるのだろうか。
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