お金持ちという人生

2/3

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「本当に断鎖をしてもいいんですか? こんなに幸せな人生だったのに」  リサの質問に老婆は頭を振った。 「幸せだなんて、この人は一度も思った事はないと思います」  貧乏な家に生まれ、必死に努力し一流企業に入った。そして夜も寝ず休みも返上し働いた。同僚や上司まで蹴散らし上へと昇った。ライバル企業を陥れ、不要になった中小企業は容赦なく切った。会社のためなら何でもやった。  それを支えてくれていた女性もいた。しかし社長に気に入られ社長の娘と結婚した。 「この人を恨んでる人は数え切れません。自ら命を絶った人も相当います。来世で仕返しをされるんじゃないかといつも怯えていました」 「だから断鎖を?」 「この人が社長を退き長男が次期社長になる予定だったんです。なのに突然事故で亡くなってしまったんです。その事故を指示したのが次男だと分かり……家庭もメチャクチャです。後悔してもしきれない、もう生まれてきたくない。最期の時は断鎖師を呼んでくれと頼まれました」  普段だったら断る案件だ。後悔すればいい。そして来世は苦しみながら罪滅ぼしの人生を送ればいいじゃないか。そうすればその次の来世ではまともに生きられるかもしれない。 「人生はやり直せるんです。また生まれ変われるんです。今世での後悔を覚えてるんだから来世ではちゃんと生きられるはずです。だから……」  リサが断ろうとするとユウが一歩前に出て口を開いた。 「ところで旦那様はおいくつですか?」  そんなの関係ある!? リサはユウを睨みつけた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加