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「この人、先月63になりました」
「63!?」
ベッドに寝ている男性は、肌は乾ききってシワだらけ、頭は真っ白。どう見ても80は超えていそうだった。
「悩んで悩んで、こんなに老けてしまいました。ある日とうとう一緒に死んでくれと包丁を突きつけられた事がありました。だから私は言ったんです。自殺したって苦しみは終わらないのよ、来世でもずっと苦しまなくちゃいけないのよ。生まれて来るたびに自殺するの? それより死ぬ前に断鎖してもらえばもう苦しまなくてよくなるわよ。
私の言葉にこの人は自殺を思いとどまり、頑張って生きてきました。なのでどうかこの人を楽にしてあげてください」
老婆は深々とお辞儀をした。
リサは老婆とユウを部屋から出した。
「断鎖師の進藤リサです。本当によろしいんですね?」
老人はゆっくりと目を開いた。そして最後の力を振り絞り頷いた。
リサはバッグから瓶を取り出し中の液体を手に塗り込めた。
「空から繋がれし鎖よ。その姿を現し給え……」
老人に繋がっている鎖が見えた。
「断! 鎖!」
重々しい鎖が音もなく崩れ落ち、消えた。
「終わりました。安心してお眠りください」
リサの言葉に老人の目から涙が流れた。
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