接触してくる人間

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 小さな部屋だったせいかリサは落ち着く事ができた。部屋は大きければいいというわけじゃない。  それに……リサは小さい頃を思い出した。まだ断鎖師なんて知らなかった頃、両親とアパートで暮らしていた頃を思い出した。6畳二間の小さな我が家。そこで親子3人で寄り添い合って生活していた。  そんな自分が今や豪華ホテルのクイーンサイズベッドで寝る毎日を送っている。あの頃は想像もしなかった生活だ。  そんな事を考えていると部屋がノックされた。慌ててリサは部屋のドアを開けた。ユウだった。 「リサ、すぐドアを開けちゃダメだよ。僕じゃなかったらどうなってたか」 「あ、そうだった」  自分が狙われてる事をすっかり忘れていた。 「このホテルはルームサービスないからお弁当買ってきました」  ユウはビニール袋を差し出した。 「うん……ありがと。明日の予定は?」 「明日は9時に近くの拘置所へ行きます。そのあとは移動です」 「了解」  よくも毎日刑が執行されるものだとリサはうんざりした、 「それからこのホテルは朝食付きなので、7時に下のレストランに行きます。迎えに来ますから起きて支度しておいてください」 「……え? レストラン? いいの?」 「まさか断鎖師様がこんなホテルに泊まるなんて誰も思わないでしょう。それに僕がついてるし」  返事はしなかったがリサの顔がピンクに染まった。その顔を見てユウは嬉しそうに去って行った。  1人で食べる食事は味気ない。どんな豪華な料理でもつまらない。でも明日はユウと一緒に食事ができる! そう思うとコンビニ弁当も美味しく感じた。  
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