接触してくる人間

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「ねえ、あれ富士山?」 「そうですよ」 「凄い。私今富士山より高い所にいるんだね」  リサは何にでも興味を示し、ひとつひとつの出来事に喜怒哀楽を表す。  殆どの少年少女たちは前世で既に知っている事ばかりなので、10代といっても落ち着いている。  初めて生まれた魂というものはこんなに無邪気なものなのかとユウは感心して見ていた。 「楽しいですか?」 「もちろんよ。北海道に行くの初めてだもの。ユウは?」 「まあ、今世では初めてです」 「前世では行ったって事? あーつまんない。一緒に楽しんでももらえないのね」 「いえ、楽しいですよ」 「ねえ、何処に行ったの? ジンギスカン食べた? 冬は雪が凄いの? 寒いの?」 「僕が行ったのは夏でした」 「ふぅん。じゃあ冬にまた来ましょうよ。初めての冬の北海道よ」 「いいですね」  かつては洋館やラベンダー畑があったという。しかし戦争で全て焼失し、北海道だろうが九州だろうが、何処に行っても同じような風景しか見られない。旅行に何の価値も見いだせないでいたユウだったが、リサに楽しみ方を教えられた気がした。  飛行機は無事空港に到着した。リサはスカートの裾がめくれるのも気にせずタラップをおりた。 「おお、北の大地! 涼しい〜……のかな?」 「本州より涼しいですが、そんなに変わりはありませんね」  でも広々とした大地に吹く風の爽やかさはリサにも分かった。
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