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仕事が終わり拘置所を出ようとした時、玄関にスーツ姿の男が立っていた。
「お疲れ様でした」
にこやかにリサに近づいて来る男は、この前ホテルのエレベーターや朝食で話しかけてきた男だった。
「えっ、何でここに……!」
「申し遅れました。私は法務省の風間ゴウと申します」
「法務省……」
法務省の役人ならリサの居場所を分かっているのも不思議ではないとリサは思った。
「で、その法務省の役人が何か用ですか?」
ユウはリサの前に立ちゴウに聞いた。
「私はそちらの断鎖師様に用があるんです」
ゴウは笑顔だが目は笑っていなかった。
「断鎖師は仕事を終えた所でお疲れです。私が話を聞きます」
「なるほど。まだお若いので話にならないというわけですね?」
「は? 話くらいできるわよ!」
「リサは黙ってて。風間さん、断鎖は人の人生を左右する過酷な仕事なんです。今は精神的に不安定なので、どうか私にお話ください」
ゴウはリサを怒らせて直接話をしようとしていたらしい。しかしユウにはゴウの魂胆は分かっていたようだ。
「そうですか。お若いのに大変なお仕事お疲れ様です。ならば尚更、私の話を聞いていただきたい」
「何でしょうか」
「これからは法務省からの依頼だけを受けてはいかがでしょうか。その人の人生や過去などは知る事なく、私たちが指示した人間だけを断鎖するのです。そうすれば断鎖師様の精神的苦痛はなくなるんじゃありませんか?」
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