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今まで依頼の殆どはユウが受けてきた。ユウの判断はリサも信頼している。それでも直接本人に会って必要ないとリサが思ったら断鎖は行わなかった。
リサは師匠から依頼を受ける基準を教えられ、それを忠実に守っている。なので依頼の理由は必ず聞かなければ断鎖をする事はできない。
「断鎖するかどうかは私が決めます。人に指図されて理由も分からず断鎖するなんて事は有り得ません」
リサはきっぱりと言った。
「断鎖師様はまだお若い。それに初めての魂だと伺っています。経験が少ないので判断も難しいのではないでしょうか」
リサは思い切り唇を尖らせた。コイツ私をバカにしてる! そう感じた。
「私が何も分かってないっていいたいの!?」
リサがゴウに掴みかかりそうな勢いだったのをユウが抑えた。
「風間さん、だからです。初めての魂だから世界で一番信頼できるんです。前世のしがらみも職場の人間関係も何もない、全くの純粋な魂だから断鎖師が務まるんです」
ゴウは一瞬ユウを睨みつけた。自分がしがらみにがんじがらめだという事を言い当てられたような気がした。しかしすぐに笑顔に戻った。
「ずっと純粋なままでいてもらうためにも依頼者の過去など知らない方が良いと思うんですが」
「それはダメ! それじゃあ断鎖師はただの人殺しになっちゃう」
「人殺し?」
「そうよ。もう生まれてこないようにするんだから人殺しと一緒。ちゃんとした理由もないのに断鎖したら私は無差別大量殺人犯になっちゃうわ」
「なるほど。まあ今日は引き下がります。でもいつか辛くなる時が来るでしょう。その時はいつでも連絡くださいね。お待ちしてますから」
ゴウは爽やかな笑顔を見せて去って行った。
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