命に関わる仕事

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 旅館へ向かうタクシーの中、リサは尖らせた唇をキッチリ結んで前を睨んでいた。  風間の言葉が頭の中でぐるぐる回っていた。風間の言う通りリサはまだ若く前世の記憶もない初めての魂だ。だから経験豊かな自分の言うことを聞けといいたいのか。  そんな事は今まで何回も言われてきた。保育園に入った時からそうだった。周りの園児たちは前世の記憶がある。絵本にしても前世で読んだ記憶があるから内容は知っている。歌もお遊戯もみんなはすぐに思い出して上手にこなした。初めてで戸惑うリサは迷惑がられたり仲間外れにされた。  学校に通うようになっても同じだった。みんなはひと通り習っているのでリサだけおいてけぼりだった。  親さえも勉強についていけないリサを疎ましく思っていた。妹にまでバカにされた。 「あー、ムカツク! 今度会ったら殴ってやろうか」  とうとうリサは思いを口にした。その様子を見てユウはくすくすと笑った。 「いいですね。僕も一緒に殴りますよ」 「じょ、冗談よ。私そんなに凶暴じゃないわ」  ユウはあの時リサを擁護してくれた。初めての魂だから純粋で正しい判断ができるのだと言ってくれた。今も自分の言葉を批判しなかった。  自分を守ってくれるのはユウしかいない。たった1人の存在だ。このままワガママを言い続けていたら、いつか愛想を尽かされてしまうだろう。それが分かっているのに何故優しくできないのか。  ひねくれ者の自分が嫌で、リサは自分のおでこを一発殴った。
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