旅館の一夜

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「ユウってお酒飲めないんだ」 「いえ、飲めますよ。なんならザルです」 「え、じゃあ何で飲まないの?」 「また法務省のお役人が現れたら困りますからね」  何しろ神出鬼没な風間だ。いつ何処に現れるか分からない。ユウはリサを守るためにお酒を飲まないのだろう。 「お待たせしました」  仲居さんが飲み物を持ってやって来た。ビンの栓を抜くとユウにお酌をしようとした。 「私が!」  リサは仲居さんからビンを横取りしユウのコップにウーロン茶を注いだ。 「あら、ふふ。ゆっくりお召し上がりください」  くすくすと笑いながら仲居さんは出ていった。 「自分でつぐからいいですよ」 「た、たまには従業員にサービスしてあげなきゃ! 有り難く飲みなさい!」 「はいはい。ありがとうございます」  リサのはしゃいだ顔を久しぶりに見て、ユウも箸が進んだ。
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