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「この聖歌集を見てください」
老女に一冊の本を渡された。
「発行年、昭和60年……!」
何世紀も前に発行された本だ。リサはこの教会だけ時間が止まっているのではという錯覚に襲われめまいがした。
「奇跡はあるのです。神様もいらっしゃるのです。人類は大きな勘違いをしているのです」
リサはユウを見た。ユウは相変わらず涼しい顔をしていた。誰かに真実を聞きたい思いでいっぱいだった。
「断鎖師様は前世の記憶がないと聞きましたが本当ですか?」
老女が優しくリサに聞いてきた。
「はい。初めての魂です」
「私はそうは思いません。全ての人間は初めての魂なのです。でも亡者に取り憑かれてしまっている。あなたの魂はまっさらで清らかな魂なのです。神様に守られた奇跡の魂なのですよ」
奇跡の魂ーー。その言葉を聞いてリサは涙が出そうになった。今までは無知で幼い出来損ないの魂だと思っていた。いや、みんなからそう思われているのだろうと思っていた。
それが神様に守られた魂だと言われた。今まで抱いていた鬱屈した感情が砕かれた思いだった。
「リサ、そろそろ理由を聞いた方がいい」
ユウが口をはさんだ。
「そうね。シスター、何故断鎖を望むのですか?」
リサは素直にユウの言葉に従った。このまま老女の話を聞いていたらキリスト教を信じてしまいそうで怖かった。
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