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ユウの前世
美味しい夕飯を食べ、今リサは露天風呂に浸かっていた。白濁した絡みつくようなお湯はリサの肌を滑らかにした。
リサは湯船の中で考えていた。今まで自分のことを連続殺人鬼だと思っていた。そう、拘置所の所長のように。公的に認められているとはいえ、他人の命を奪ってきた。所長が断鎖したい気持ちは痛いほど分かった。
でもシスターに会ってそんな罪悪感は薄らいだ。みんな前世の記憶があるというが、それは亡者の残留思念なのかもしれない。ならば断鎖をしてこの世に思念を残さないようにする事は良い事なのかもしれない。
でも断鎖をしたら思念は残らないのだろうか。そもそもシスターの考えは妄想で、本当は生まれ変わりはあるのだとしたら……やっぱり自分は殺人鬼だ。
本当の事が知りたい。でも生きている自分には分からない。もやもやする。
それでもシスターに”奇跡の魂”と言われた事は嬉しかった。自分は神に守られているのだろうか。だとしたら幸せだ。
「長かったですね」
お風呂からあがると部屋にユウがいた。浴衣を着てくつろいでいた。
「いいお湯だったんだもん!」
湯上がりの火照った顔でリサはふくれっ面をした。いつもよりも可愛く見えて、ユウは一瞬見惚れてしまった。そして自分の前世を思い出していた。
ユウは前世でも断鎖師の運転手をしていたのだ。
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