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噂ではあの少女も成長し、立派な断鎖師になったと聞こえてきた。しかしそれも前世の記憶。ユウはリサのあどけない顔を見るたびにあの少女を思い出す。
断鎖をしたらその魂はどうなるのか。リサが気にする以上にユウが知りたい事だった。
「結局なってみなきゃ分からないのよね」
「え、何がですか?」
「断鎖したらどうなるのかよ」
「そうですね。輪廻が本当にあるのかも生きているうちは分からない」
「そうそう。深く考えない事よね。考えても無駄。師匠がそう言ってたっけ」
断鎖をしたら本当に輪廻から外されるのか。それとも単に前世の記憶を失くすだけの事なのか。
そもそも輪廻など存在せず、亡者の思念だけがこの世に残っているものなのか。
それは死んでみなければ分からない。ただ断鎖が前世の記憶を消すだけのものだとしたら、あの時の断鎖師は今何処かに生まれ変わっているのかもしれない。前世の記憶をもたずに生まれて来ているはずだ。
もしかしたらーー。ユウはリサを見て前世の断鎖師の面影を探した。しかしすぐに仕事モードに切り替えた。
「明日は8時に出発です。その後は東京に移動です」
「えー東京? 温泉ないじゃん!」
リサのふくれっ面を見て、そういえば彼女も良くふくれっ面をしていたなと、ユウの頬が緩んだ。
〈終〉
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