断鎖師のお仕事

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「さっきの死刑囚、前世で交通事故で人を轢き殺しちゃったんだって。だから今世では車の免許も取らずに真面目に生きてたんだって。なのにその前世の被害者と同じ職場になっちゃって。謝っても謝っても許してるもらえなかったんだって。そのうちこき使われたりお金を請求されたり。それでも負い目があるから逆らえなくて。で、またその人を今世でも殺しちゃったってわけ。同じ人を2度も殺しちゃうのは極刑確定だもんね」  現在の法律では前世と同じ罪を犯すと2倍の刑を処せられる。1人殺したとしても2人殺害したと認定されてしまうのだ。 「さすがに来世も同じ思いをするかもって思うと生まれ変わりたくないですよね。そりゃリサに依頼するわけだ」  理由は色々だが、リサに輪廻の鎖を断ち切って欲しいと依頼する者は後を絶たない。 「ところで残り1%の人って何なんですか?」 「ん?」 「前世の記憶を持たずに産まれてくる人ですよ」 「ああ、それは新しい魂の人よ。初めて人間として産まれてきた人。私みたいに」  リサは前世の記憶を持っていない。なので前世の記憶に苦しむ人の気持ちが分からない。  しかしそれが断鎖師になる唯一の資格なのだ。何のしがらみもなく、恨みを持っていない初めての魂なら技を悪用する事はない。 「羨ましいな、前世の記憶がないなんて」 「ユウはあるの? 前世はどういう人だったの?」 「教えません」 「ケチっ! どうせ女ったらしだったんでしょ」  リサはユウの事は殆ど知らない。運転手を募集したら一番初めに応募してきたのがユウだ。顔の良さで即採用した。どうせ狭い空間で一緒にいるなら若くていい男がいい。そんな単純な理由だった。
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