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狙われる断鎖師
車は高速道路を軽快に走っていた。ひと仕事終え、次の依頼者の元へと向かっている。
「疲れた顔してますね」
ルームミラーをチラッと覗き、ユウが言った。
「疲れてなんかいないわ」
しかし言葉とは裏腹に、リサは疲れを感じていた。仕事自体はいつも通り、つつがなく終わった。しかし車に乗り拘置所を出ようとしたら突然老婆が行く手を遮った。
「私も生まれ変われなくしてください!」
老婆は昨日刑を執行された男の母親だった。自分の育て方が悪くて息子を犯罪者にしてしまった。来世も犯罪者を育ててしまうかもしれない。もう生まれてきたくない。そう執拗に訴えてきた。
車を出せずにいると拘置所の職員が出てきて老婆を抑えてくれた。そのすきに何とか発車できた。でもあの老婆の悲愴な顔がリサの瞼に焼き付いてしまったのだ。
自分のしている事の意味が分からなくなっていた。本人の苦しみを取り除く事はできた。でも家族はどうなんだろう。来世も罪人の家族の記憶を持ち生きていくのだ。明るく前を向いて生きていけるのだろうか。
「!!」
物思いに耽っていると、突然車が揺れた。
「どうしたの?」
リサは思わず前の座席を抱きしめユウを見た。ユウは少し緊張した顔をしていた。
「急に割り込まれた」
「危ないわね」
しかし前に割り込んできた車は蛇行運転をしたり急ブレーキを掛けたりを繰り返した。明らかにリサの乗る車をターゲットにしている。
「何なのよあの車!」
「拘置所からずっとつけて来てる」
「え?」
「リサに用があるみたいだ」
「私には用はないわ!」
「ですよね。じゃあ、巻きます。しっかりつかまっててください」
そう言うとユウはアクセルを踏み込んだ。蛇行する車を追い越し猛スピードで抜き去った。しかし車も猛スピードで追いかけてくる。
「追いつかれちゃう!」
後ろを見ながらリサは叫んだ。追いつかれるどころか追突されそうな勢いだ。
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