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冷静な顔でアクセルを踏み続けるユウ。後ろの車の運転手は必死の形相でハンドルを握りしめている。どうやらユウの方に分があるようだ。
「あ、後ろからもう1台来た!」
後方から赤色灯をたいてパトカーが追いかけてきた。
「じゃあ後ろの車は警察に任せよう」
そう言うとユウはいきなりハンドルを切った。激しく車体を揺らし、車は高速出口の車線に入った。後ろの車は車線変更できずにそのまま走り去って行った。パトカーを従えて。
料金所を抜けて一般道路に出た。今まで高速を超高速で走っていたので、今の速度が恐ろしくゆっくりに感じた。
「怖かった?」
「……別に!」
強がってみせたがリサは汗だくだった。声も少し震えている。
「と、ところで。アイツら何者? 何で私を追っかけてきたのよ」
「まあ殺意はなかったようですね」
「殺意!? 私を殺す気!?」
「歴代の断鎖師たちも暗殺されかけたようです」
「暗殺!?」
そんな事を知っていたら断鎖師になんてならなかったのに。リサは何も話してくれなかった師匠に腹が立った。
「でもどれも未遂だったんじゃないんですか? だって暗殺されてたら今頃断鎖は途絶えてるはずですよね?」
断鎖師は世界でただ1人だけだ。師匠は後継者は育てるが、その秘術は臨終の時に授ける。リサも師匠の臨終に立ち会いその術を受け継いだ。そして受け継いだ術を初めて行う相手こそ師匠だ。師匠が生まれ変わってしまったら断鎖の記憶を持って生まれてくる事になる。それはあってはならない事だ。断鎖は必要最低限でなくてはならない。
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