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「痛ってぇ!」
転倒した成瀬さんにさらに殴り掛からんばかりにこぶしを振り上げているのは名絆くんだ。後ろ姿で表情がうかがえないが殺気が視感できるかのように漂っている。
「待って!殴っちゃだめ!」
ピタリと手を止めた名絆くんは、振り返ってこちらに駆け寄ってきてくれた。
「凜花ちゃん大丈夫!?」
「うん......」
名絆くんのいつもの様子に安心した私は、そのまま腰が抜けてしまう。
「膝すりむいてる……。俺の背中に乗って?旅館まで運ぶよ」
向けられた広い背中に、私は素直に甘えた。そこでまたバタバタと足音が聞こえてくる。
顔を出したのはお父さんとゼミ生さん達だ。
みんな一同に鬼のような形相で菊川さんと成瀬さんを睨んでいる。
「子供達を探して来てみれば......。これはどういうことかな?話、じっくり聞かせてもらおうか?」
お父さんの冷たい笑顔に、菊川さん達は手を取り合ってあからさまに怯えていた。
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