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「あ!ごめんねこんな話。あのね、お父さんは……」
名絆くんは軽く顔を上げて目線だけこちらに向けると首を横に振った。
「親子は親子でしょ?2人の時間をこんなとこで邪魔しててごめんね」
背負ってくれているのに申し訳なさそうにしている名絆くんに、お父さんはクスッと笑ってから私の耳元で囁いた。
「ナズナって植物あるじゃない?この子と同じ名前の、ぺんぺん草」
「う、うん?」
「どこにでも生えてると思いきや、品種によっては絶滅危惧種になるほどに希少なんだよ」
「そうなの?」
「彼も今どき珍しく、純粋で結構いい子だと思う。もし特定の男の子と仲良くなることを僕に遠慮してるなら、そんな必要ないからね?」
お父さんは真っ赤な私の顔を見て、おかしそうに笑った。
「ほらほら若松くん。早く娘を旅館に連れて行ってくれない?」
「はい、お父さま!」
「だからその呼び方はやめて」
お父さんが手をひらひらさせながら促すので、私たちはその場を後にする。そこでまだ地面が振動して空が光る。先ほどから花火が上がり続けていたのだ。
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