16

1/1
前へ
/18ページ
次へ

16

「重いよね?ごめんね」 「全然重くないよ。そんなことより、さっきは慌てちゃったよ」 湖畔沿いに歩きながら、名絆(なずな)くんが辛そうに言った。かなり心配をかけてしまったようだ。でもあのタイミングで来てくれなかったらどうなっていただろう?今更ながら怖くなって、名絆(なずな)くんの首に回した腕に力が入ってしまう。 「怖かったよね凜花(りんか)ちゃん。でも、俺も同じことしてた」 「へ?」 「もうしつこくしないから。本当、ごめん」 いつもの積極的な名絆(なずな)くんじゃない。ひどく落ち込んだ様子に、身体を寄せた背中が無性に愛しくなる。 だから……。 ガタッ 「おわっ、凜花(りんか)ちゃん急に動かないで!?」 私が腰を浮かせたので、名絆(なずな)くんが露骨にびっくりしている。 心を決めた私はこちらを振り向こうとしてきた横顔に思い切り……。 ...... 轟音が鳴る。 火花が流れるように散っていく。 曇りのない湖の水面(みなも)は、名絆(なずな)くんと私の顔が重なった影を映し出した。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加