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「重いよね?ごめんね」
「全然重くないよ。そんなことより、さっきは慌てちゃったよ」
湖畔沿いに歩きながら、名絆くんが辛そうに言った。かなり心配をかけてしまったようだ。でもあのタイミングで来てくれなかったらどうなっていただろう?今更ながら怖くなって、名絆くんの首に回した腕に力が入ってしまう。
「怖かったよね凜花ちゃん。でも、俺も同じことしてた」
「へ?」
「もうしつこくしないから。本当、ごめん」
いつもの積極的な名絆くんじゃない。ひどく落ち込んだ様子に、身体を寄せた背中が無性に愛しくなる。
だから……。
ガタッ
「おわっ、凜花ちゃん急に動かないで!?」
私が腰を浮かせたので、名絆くんが露骨にびっくりしている。
心を決めた私はこちらを振り向こうとしてきた横顔に思い切り……。
......
轟音が鳴る。
火花が流れるように散っていく。
曇りのない湖の水面は、名絆くんと私の顔が重なった影を映し出した。
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