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18
「凜花ちゃん、背負い直していい?」
「あ、うん。ありがとう」
名絆くんが膝をついたので、私はゆっくりとその場に降りる。
するとすぐに立ち上がってこちらを振り向いた名絆くんとばっちり目が合った。その表情はとても真剣で……信じられないくらいにカッコいい。
「えっと。もしかしてやっぱり重かっ……」
恥ずかしくて一歩下がろうとした片足が宙に浮いた。名絆くんが私を持ち上げるように包み込んだのだ。
「わっ!?」
「今さ、入学式で会った時よりもドキドキしてる!夏が終わっちゃうのに、すっごく嬉しい」
(ああ、夏の終わりだ。じゃあそろそろ咲こうかな?そろそろ実をつけようかな?)
楽しそうなあの日のお母さんの声が聞こえてくる。
そっか。夏の終わりは悲しくなんかなくて、お母さんと過ごした一番幸せな時間だったんだ。
「俺も好きだよ凜花ちゃん。大好き!ありがとう!」
お礼なんて言わないで?植物と同じように思ったただけだよ。これはただの、私の一人語り。
(ああ、夏の終わりだ。じゃあそろそろ……恋しようかな?)
ってね。
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