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……
お母さんの夢を見ていた。
「明日から夏休みだからかな。懐かしい……」
大好きなお母さんは、あれからまもなくして亡くなった。
だから夏は苦手。底知れない悲しみを呼び起こす、夏の終わりがやってきてしまうから。
「凜花ちゃん好きです。大好き!」
図書室中に響き渡る声に、夢うつつだった私の頭は一気に冴えわたる。見渡すと他に生徒はおらず、司書さんもちょうど不在だったので一瞬安心したのだが。
「ちょっと、声が……大きいよ」
「だって本当のことだし!」
入学式の翌日からことあるごとに告白してくる若松名絆くんが、今日も堂々と好意を告げてくる。人なつこくて社交的な、同じクラスの人気者。どうして根暗な私なんかにこうも寄ってくるんだろう。
「今日こそ!今日こそ『うん』って言って!?ねえ、俺と付き合ってください!」
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