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「『ああ、夏の終わりだ。じゃあそろそろ咲こうかな?そろそろ実をつけようかな?』」
「なあに、それ?」
「コスモスと秋ナスのつぶやき。一人語りよ」
病室から拝める田園風景を眺めながらお母さんが言うので、私は冗談ばっかりと笑ってしまった。
「笑うとこじゃないのよ?植物ってね、温度や光だけで季節を感じてるわけじゃないんですって。まだまだ不思議が多いよね」
「そうなの?」
「お父さんの受け売りだけど」
見るからに照れ顔になったお母さんに寄り添ってみると、頬がだいぶこけてしまっている。それでも、やっぱりお母さんはキレイ。よく似てると病院の人に言われる私はとても誇らしかった。
「ねえ凛花?選ぶんならお父さんみたいな人にしなさいね?優しくて真面目で。いざとなったら守ってくれる、頼れる人」
「うん、そうする」
「これから先もお父さんを......よろしくね」
お母さんが言いながら私の髪を撫でてくれたので、嬉しくなって気持ちがよくなって。なんだか無性に眠たくなってきた。
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