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しばらく行くと、想太が、鼻歌を止めて言った。
「なあなあ、みなみ。この歌の題名はな~んだ?」
「え? ちゃんと聞いてなかった」
「なんや。聞いてへんかったん? じゃ、もう一回な」
想太が、鼻歌のボリュームを少し上げる。
♪ふ~ん、ふ~ん、ふんふふふんふん、ふ~んふ~んふ~ん。
「え~と、え~と。あれ、ほら、オーバー・ザ・レインボー」
「あたり~。じゃあ、次は、これな」
ふたたび、想太の鼻歌が始まる。
5曲目を当てたところで、想太とお母さんの待ち合わせ場所に着いた。
「じゃあ、また明日ね」
私が、帰りかけたところに、お母さんがやってきた。こんにちは、といいかけた私を見るなり、お母さんが言った。
「あ、ちょうどよかった! 今日、このあと、何か予定ある?」
「いえ。何にもないです」
「一緒に、舞台見に行かへん?」
「え? いいんですか?」
私は、思わず、飛びつくように言った。
一緒に行くはずだった人が、急用で来られなくなったらしい。お母さんは、その場で、私の家にも電話して、一緒に行っていいというOKをもらってくれた。
6時開演で、7時半終演。それなら、帰ってから宿題もできそうだ。
想太と私のカバンは、駅のコインロッカーに預けて、電車に乗る。
会場の最寄り駅に着いて、まず差し入れを買ってから、晩ご飯を食べに行くことになった。
「みなみちゃん、イタリアンでいい?」 お母さんが言う。
「もちろん。なんでも食べます!」
「おお。頼もしいね」
「めっちゃ、美味しいとこやねんで。ぜったい、みなみも気に入ると思う」
想太が、ウキウキ顔で言う。想太と私の食べ物の好みはよく似ている。だから、想太がそう言うんなら間違いないはず。想太だけじゃなくて、私まで、ウキウキしてくる。
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