7. 舞台①

1/2
前へ
/79ページ
次へ

7. 舞台①

 晩ご飯は、想太の言うとおり、めちゃくちゃ美味しくて、今度また、家族で来ようと思ったほどだった。  会場について、差し入れを届けるお母さんと想太にくっついて、私も楽屋に行かせてもらう。こんな経験は初めてだ。    楽屋で、舞台前だけど、意外とくつろいだ表情で座っていた妹尾圭さん(想太のお父さんだ)が、私たちの姿に、めちゃくちゃ優しい笑顔になった。 「佳也ちゃん、想ちゃん。ありがとう。みなみちゃんも、急なのに、来てくれて、ありがとう」    想ちゃん、と呼ばれた想太は、 「とうちゃん」  そう言って、お父さんに抱きついている。そんな想太を、お父さんが抱きしめ返して、2人は、ぎゅうぎゅうと言いながら抱きしめ合っている。お母さんも横で、そんな2人をニコニコして見守っている。 「あ。あかん。衣装、シワになったら……」  我に返った想太が、あわてて言うと、 「大丈夫。これ、そんなにシワにならないし。それより、想ちゃんのぎゅう~があると、元気出るからね」  お父さんがそう言ってほほ笑む。 想太も、ほほ笑んでいる。  ふと見ると、お父さんとお母さんが、そっと交わしている視線が、これまためちゃくちゃ甘い。見ているこっちまで、幸せな気持ちになるような空気が、3人の間に流れている。 (いいなあ。こんな家族って……)  うちだって、仲いい家族だと思うけど、想太のところは、いっそう幸せ度が高そうで。   「じゃあ、舞台、楽しんでね」 お母さんが言った。 (あ、がんばって、じゃないんだ。楽しんでね、っていうのもいいなあ) そう思って見ていると、妹尾圭さんが、唇の両端をそっとあげて、 「みんなもね。 それと、差し入れも、ありがとう」 極上の笑顔で言った。至近距離で見て、思わずクラッとする。 (うわ。やばい。まともに、見てしまった……) 想太の笑顔の破壊力もハンパないけど、圭さんは、さすが現役アイドル。 すごすぎ……。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加