9. つき合ってるの?

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 昨日、あのあと、なかなか泣き止まない私を、なだめるように、想太はそっと背中をとんとんしてくれた。大丈夫大丈夫。そう言いながら。  そこへ、想太のお母さんが、劇中に使用された曲の、ピアノ譜を買ってきてくれて、 「みなみちゃん、これ、おみやげ。さっき、楽譜欲しいって言ってたでしょう?」 そう言って、にっこり笑いかけてくれた。ひまわりみたいな明るい笑顔で、心に光が差す。 「お、さすが、かあちゃん。オレの分もある?」 「あるよ」 「やったあ。 なあ、みなみ。これにのってる曲、1つずつ弾けるように練習していって、今度、一緒に弾こう」  想太が私の顔をのぞきこんで、笑顔で提案する。 「う、うん」 「ほら、行こか」  想太の笑顔が眩しい。  帰りの電車の中では、すっかり、私の涙も収まって、3人で楽譜を見ながら、この曲のこのフレーズがいいよね、とか盛り上がった。  家まで送り届けてもらい、想太のお母さんと私のお母さんが、話をしている間、私と想太は、楽譜集の中の1番目の曲をいつまでに弾けるようになるか、約束をした。  そして、夜、ベッドの上で、私は、想太の言葉を思い返していた。  『絶対。何があっても、オレ、みなみのこと、きらいになんかなれへん』 『きらいになれへん』ってことは、今、『好き』ってことでもあるよね?  想太は、私のことが好き、ってこと? でも、その好きは、どういう好きなんだろう?  幼なじみとして?  1人の女の子として?  そのへんが、よくわからない。  私自身の好きが、ほんとなのかどうか、という問題もあるけど、想太の好きも、どうなんだろう?    昨日の夜から、頭の中にぐるぐるしている疑問を、ぼんやり考えていると、ナナセが言った。 「……なんか、ぐるぐる考えてるみたいだけど。とりあえず、今はそうじ! でもって、すごく素敵な舞台だったから、あとで、舞台の話も、こっそりしようよ」 「うん。そうだね」  私は、ホウキをにぎり直す。
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