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―――ところが。
この前、仲良しの、サトミちゃんが、言ったのだ。
「あのさ、ほんとに好きだったら、理由なんて、ないんだって」
え? うそ?!
じゃあ、私の『好き』って、何なの?
この気持ちって、ほんとの『好き』じゃないの?
心の中に、大きなギワクを抱えて、私は、隣を歩く想太を横目で見る。
保育園のときは、ぽてぽてとおモチのようにふっくらしていたほっぺが、少し、しまってきて、きれいな横顔だ。
「あ、そこ。水たまり」
想太が、私の袖を引っぱってくれて、ぎりぎりのところで、私の靴はぬれずにすんだ。
「ぼ~っとしてたらあぶないで。寝不足か?」
心配そうに言って、私の顔をのぞきこんでくる。
「う、うん。ちょっとね」 あわてて答える。
(……うそつけ。昨夜も、10時には寝てたくせに)
心の中で、自分につっこむ。
「あぶないだけやなくて、睡眠不足は、美容と健康の大敵なんやって。父ちゃんが言うてた」
想太はニコニコしている。父ちゃんの話をするとき、彼はいつもそうだ。嬉しそう。
「うん。気をつけるよ」
「うん」
うなずいた想太は、向こうから歩いてきた友達に手を振っている。
(ああ。ざんねん。今朝の2人の時間は、ここまで~)
まあ、いいか。
私には、ギワクをカイメイする時間が必要だ。
あ、付け加えておくと、ギワクもカイメイも、私はちゃんと漢字で書ける。
でも、ちょっと漢字テスト風に言ってみただけだからね。
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