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「……お聞きいただいた曲は、Hey! Say! JUMPの『Puppy Boo』 でした」
私が言うと、続けて想太が、なめらかに言った。
「では、今日の放送は、ここまで。また皆さんからのリクエスト、お待ちしてま~す。今日の担当は、妹尾と、一ノ瀬でした。Thank you for listening.」
『今日の担当は』のところからは、2人で一緒に言った。
放送が終わって、2人で職員室を出ようとすると、音楽の先生が声をかけてきた。
「今日の曲、すごくよかったね。2曲とも私の好きな曲で、嬉しかったわ。それにしても、一ノ瀬さん、アナウンスだいぶなれたみたいね。もともと声もいいし、間の取り方がいいから、とても聞きやすくていいね」
私が照れて、すぐに言葉が出てこないでいると、
「僕は? 僕は?」 想太が、笑って横から言った。
「もちろん、妹尾さんも、上手い! 2人の声の組み合わせは絶妙にいいね」
「ありがとうございます。へへ。……むりやり褒めさせてしもた~」
想太がふざけながら言って、私たちは、笑いながら職員室の扉をしめた。
廊下を歩きながら、想太が言った。
「……よかったね」
「ん?」
「先生、褒めてはったやん。声もいいし、間の取り方がいいって」
想太が、ニコニコしている。
「うん。なんかすごく嬉しい」
でも、実は、それ以上に、私は、『2人の声の組み合わせが絶妙にいい』と言われたことが心に残っていた。
実は、自分でも少しそう思っていたから。他の人からもそう聞こえていたのか、と思うと、やった~!って言いたいような気持ちになった。
想太の声と私の声。
大好きな想太の声と絶妙な組み合わせと言われた――――私の声。今まで、あまり思ったことがなかったけど、また一つ、大事なものが増えた気がした。
好きな人につながるものが、すべて大切なものに思える。
(これって、ほんとの『好き』ってことには、ならないのかな?)
私は、ちらっと頭の片隅で思った。
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