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翌朝、目覚めるとすぐ、私は想太にスタンプを送った。ポンポンを持って応援している、パンダのスタンプだ。何もしてあげることはできないけど、せめて、想太の好きなパンダで、応援しよう。
少ししてから、同じパンダがガッツポーズをしているスタンプが、想太から返ってきた。
想太に。『行ってらっしゃい』のスタンプを送ったあと、やっぱり落ち着かなくて、気分を切り替えようと、私はピアノを弾いていた。
そして、弾きながら、私は気づいてしまった。
私が、これほど落ち着かない気持ちになる理由に。
今回のオーディションは、想太の夢への第一歩になる。そして、その一歩は、きっと大きい一歩になるだろう。
想太は、きっと合格するはず。こんなに可愛くて、カッコよくて、歌もダンスもピアノもできて、誰からも好かれている想太。
人から愛されることって、アイドルには、一番必要な才能だろう。それを持っている、そんな想太なら……きっと。
今まで、うちの学校の中だけのアイドルだった想太が、本格的にその道を進み始めたら、もう、うちだけの存在じゃなくなる。そしたら、今までみたいに、私がそばにいることは、できなくなるかもしれない。いや、たぶん、できない、と思う。
彼の合格を祈りながら、一方で、さみしいと思ってしまう自分がいる。
(ごめん、想太。私は、自分勝手だ。こんな気持ちで応援してるなんて、言えるのか?)
2人で弾いた連弾曲の、1人分のパートだけを繰り返し弾きながら、私は、心の中で、何度も、ごめんとつぶやいていた。
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