15. 可愛いは必須

1/2
前へ
/79ページ
次へ

15. 可愛いは必須

 ピアノを弾き終えて、私は、ベッドの上に寝転がった。  枕の横にいつもおいている、羊毛フェルトの小さなパンダを手に取る。  これは、前に、想太がくれたものだ。手のひらサイズの小さなその子は、想太の手作りだ。  見つめているうちに、この子を作っていたときの、想太の一生懸命な顔が思い浮かんだ。  前に、圭さんの舞台を観に行ったとき、想太から相談にのってほしい、と言われたことがあって、何かな? と思っていたら、それは、想太の3つ下の妹の誕生日プレゼントのことだった。  妹の香奈ちゃんは、普段は、想太とは離れたところに住んでいる。その子へのプレゼントに何がいいか、想太はずっと迷っていたらしい。 「女の子が喜んでくれるもんってなんやろ? みなみ、なんかええアイデアない?」 「う~ん。何がいいかなぁ。……とにかく、可愛い、は必須だけど」  はじめ、ぬいぐるみなんかいいかも? と可愛い雑貨を売っているお店に、2人で行ってみた。ところが、ほんの小さな手のひらサイズのものでも、びっくりするような値段で。 「なんで、子どもがほしくなるもんに、こんなたっかい値段つけるんかな」  想太は、めずらしく、頬をふくらませてぼやく。 「ほんとに、高いね。でも、ぬいぐるみって、子どもだけじゃなくて、大人も、自分用にけっこう買ってるから。それで、こんな強気なお値段になるのかな」 「そうなんかな……。でも、オレ、むりや。いいなと思うやつは、とても買われへんわ」  想太がため息をついた。  ぬいぐるみ以外で何かないか……グルグル見て回ったけど、どうもこれだ! と思えるものがない。  う~ん。 2人で、頭を抱える。  
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加