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15. 可愛いは必須
ピアノを弾き終えて、私は、ベッドの上に寝転がった。
枕の横にいつもおいている、羊毛フェルトの小さなパンダを手に取る。
これは、前に、想太がくれたものだ。手のひらサイズの小さなその子は、想太の手作りだ。
見つめているうちに、この子を作っていたときの、想太の一生懸命な顔が思い浮かんだ。
前に、圭さんの舞台を観に行ったとき、想太から相談にのってほしい、と言われたことがあって、何かな? と思っていたら、それは、想太の3つ下の妹の誕生日プレゼントのことだった。
妹の香奈ちゃんは、普段は、想太とは離れたところに住んでいる。その子へのプレゼントに何がいいか、想太はずっと迷っていたらしい。
「女の子が喜んでくれるもんってなんやろ? みなみ、なんかええアイデアない?」
「う~ん。何がいいかなぁ。……とにかく、可愛い、は必須だけど」
はじめ、ぬいぐるみなんかいいかも? と可愛い雑貨を売っているお店に、2人で行ってみた。ところが、ほんの小さな手のひらサイズのものでも、びっくりするような値段で。
「なんで、子どもがほしくなるもんに、こんなたっかい値段つけるんかな」
想太は、めずらしく、頬をふくらませてぼやく。
「ほんとに、高いね。でも、ぬいぐるみって、子どもだけじゃなくて、大人も、自分用にけっこう買ってるから。それで、こんな強気なお値段になるのかな」
「そうなんかな……。でも、オレ、むりや。いいなと思うやつは、とても買われへんわ」
想太がため息をついた。
ぬいぐるみ以外で何かないか……グルグル見て回ったけど、どうもこれだ! と思えるものがない。
う~ん。 2人で、頭を抱える。
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