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(やっぱり、想太、大好き! )
思わず、口にしそうになったとき、リビングのドアが開いて、
「ただいま~。あ、みなみちゃんいらっしゃい」
想太のお母さん、佳也子さんだった。買い物袋を両手に下げている。
「あ、かあちゃん、お帰り~。荷物もつで」
佳也子さんの手から買い物袋を受け取り、想太はキッチンに運んでいく。
その後ろ姿をみながら、お母さんがテーブルを見る。
「あ、羊毛フェルト。……可愛い。パンダ。上手いね」
お母さんがニコニコして言った。
「可愛いやろ? 香奈ちゃんのプレゼント、何にするか迷ってたら、みなみが提案してくれてん」
「そうなんやぁ。めっちゃいいアイデアやね」
「かあちゃんも、なんかほしいのあったら、香奈ちゃんの作ったあとで、作ったるで」
「あら、そう。じゃあ、ブタ。ピンクの子ブタ。ころっころの」
「よっしゃ」
(あ。いいな。子ブタ。それも可愛いな)
一瞬、心が揺らぎそうになったけど、私には、この子がいる。
私は、想太の初作品の、パンダにそっと頬ずりした。
そして、その日以来、その子は、『想想』という名前で、私の枕元に住んでいるのだ。
「想想、想太、きっとがんばってるよね。素敵な笑顔で、周りの人もみんなも笑顔にしてるよね、きっと」
私は、小さなパンダに話しかける。だんだん気持ちが落ち着いてくる。
さみしいとか、そんな情けないこと言わずに、しっかり彼を応援しよう。
私は、想想を見ながら、あの日の真剣な想太の顔を思い出す。
(大好きだよ。想太。想太の『一生懸命』を、私は、力一杯応援できる人になりたいよ。――――だから、想太。がんばれ。がんばれ)
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