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想太には、ファンクラブが多数ある。もちろん、本人は知らない。
多分、本人の知らない非公式ファンクラブが、校内には、いくつもあると思う。
でも、表だってそれを言わないのは、想太がテレて、困った顔になりそうだということや、変に目立って、想太が、他の男子連中に、目をつけられたり、からかわれたりしてはいけない、という気づかいからのようだ。
無事、必要な線を引き終えたのか、想太が、再び、ありがとう、と言って、定規を返してきた。
「ん」
短く答えたのは、教室の向こう端から、じっと見ている視線を感じたからだ。ミヤちゃんとは別のファンクラブ会長、ナナセだ。彼女は、ちょっと手強い。
そんな気配に、まったく気づく素振りもなく、想太がのんびり声をかけてくる。
「なあなあ。みなみ、オレ、算数の教科書忘れたみたいや。」
授業が始まったら見せてな、と言うので、私は、素直にうん、と言った。
(ごめん、ナナセ)
ナナセの目がキランと光った気がした。
ちなみに、チョウホウカツドウもササイも、なんとなく読めるけど、漢字で書くのは、……ちょっと自信ないかも。
そんなことを思っていると、 隣で、想太がつぶやいた。
「あ、……国語も忘れた」
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