4. わかってなさそう……

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 チャイムが鳴った。 授業の終わりの礼がすんだとたんに、想太は、クラスの男子たちと、外へ飛び出していく。サッカーをするのだ。 「ねえ、想太くん、何の本読んでた?」飛ぶようにやってきたナナセが言う。 彼女の席からは、よく見えなかったようだ。 「あ、えっと空想科学読本」 「何巻?」 「えっと、さあ?」 「ちゃんと見といてよ。あとで、図書館に予約入れるから」 「自分で、想太にきいたら?」 「あ、そうか! その手があった! ……どうも、ファンクラブ気分にはまりすぎて、自分から本人にきくっていう発想がうかばなかったよ」 ナナセが笑う。 「なるほど」  2人で笑いながら、ふと見ると、窓際のあちこちに、運動場を見下ろしている女の子たちがいる。ミヤちゃんもその中の1人だ。まさか、みんながみんなが、想太を見ているわけではないと思うけど。運動場には、クラスの子たちと元気いっぱい、走り回る想太の姿がある。  チャイムが鳴って、嵐のように、男子たちが走り込んでくる。  自分の席に座った想太は、汗だくだ。そして、何かをさがして、カバンの中や、机の中をゴソゴソしている。 ハンカチ、忘れたな。たぶん。 「はい。これ」  青いタオルハンカチを渡す。 「想太、汗だく。これ、予備のやつだから、そのまま使ってていいよ」 「え? ええの? ありがとう」  受け取ったタオルハンカチで、汗をふいて、想太はホッとした顔になった。 そして、言った。 「あ、そうや。みなみ。かあちゃんが、近いうちにうちにおいでって言うてたで。なんかおすすめの本があるらしい」 「あ、ほんと。ありがとう」(今、言うなよ。想太ってば……)  何気ないフリで、そう答えたものの、女子たちからの視線が痛い。  想太、わかってる? ……わかってなさそう。   「なあなあ、みなみ。そういえば、この前のカレーのシミさ、なんとかとれたで」 「よかったね。あのパーカーお気に入りって言ってたもんね」 「うん。もう今度から、カレーの日には、お気に入りは着んようにしようと思って。毎日、給食のメニュー、ちゃんとチェックしてるねん」 「ビーフシチューやミートソースもキケンだよ」 「そうか。そやな。でも、今日は、からあげやから、大丈夫」 「お。今日、からあげ? やった~」  横から、同じ班の田沢君が言った。  男子たちは、からあげ、からあげ、と嬉しそうだ。いや、私も好きだけどね。
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