焦りと光明

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「なんだよ! びっくりすんだろ! 脅かすなよ」 「……メーイチくん」 「え、なに?」  森さんは、名案を思いついたと言っていたにも関わらず、ありえないぐらい低いテンションで彼に話しかけた。 「な、なんだよ、こえーな。お前らのことだったら、誰にも言わないから」 「お前らのことって、な、なにそれ」  わかりやすいぐらい動揺してしまうぼくをよそ目に、彼女は相変わらず暗い顔をしていた。前髪で目元をわざと隠している。 「……メーイチくん」 「だから、なんだよ。幽霊みたいな声出すなよ」 「……用務員さんと、仲良いの?」 「用務員さん? あー、藤原さんのこと? まあ、仲良いって言うか、親の知り合いなんだよ。俺も前から知ってて」 「……へー、そうなんだー」 「それがなに? お前さ、その前髪やめろって、こえーんだよ」  そう言われて、彼女は両手で前髪を直した。そして、力強くこう言った。 「お願いがあるの。なにも聞かずに、わたしたちのお願いを聞いてほしい」 「お願い? な、なにそれ?」 「聞いてくれるなら、わたしなんでもするから」 「は? なんだよそれ、怪しすぎる。なに企んでんだって」 「用務員さんに言って、あの校舎裏の倉庫の鍵を開けてほしいの」 「倉庫の鍵? なんで?」 「理由は聞かないで」 「いや、聞くでしょそりゃ」  ごもっとも。もちろん聞きますよね。  はぁ、と声を漏らす森さん。彼女はどうやってメーイチを説得しようとしているのか。ぼくには見当もつかない。 「……聞きたい?」 「まあ、聞きたいよ」 「本当に?」 「なんだよもったいぶらせて」 「……実はね、あの倉庫、出るの」 「出る? なにが?」  これが、と言って森さんは両手を曲げて、顔の前に垂らした。 「幽霊? んなばかな」 「本当よ。それを確かめなくちゃいけないの」 「いや、だとしたらなんでお前らなんだよ。おかしいじゃん」 「わたし、霊感があるから」 「え、本当に?」  ぼくは思わず声を出してしまった。その反応に、彼女は怒りをぶつけるように睨みつけてきた。 「こいつ知らなかったみたいだけど?」 「赤間くんには言ってなかったから。でも、本当なの。一度、中を見てみたいの。お願い。この通り」  森さんは両手を合わせて顔の前に差し出している。それを見て、ぼくも慌てて習った。 「いや、そんなこと言われてもな」  メーイチが顔を歪ませてわかりやすいぐらいに困っている。ぼくは頭を下げながらその様子を薄目で見ていた。
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