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そのとき、ちょうどタイミング悪くチャイムが鳴った。あ、やべ、と言ってメーイチは教室に向かう。ぼくと森さんもそれに続くのだけど、まだ答えはもらってない。
昇降口で上履きに変えたところで、メーイチはぼくたちを見た。
大きなため息を吐いたあと、「わかったよ」と言った。
「え、ほんとに?」
「マジで? ありがとう」
ぼくと森さんはくじ引きで景品が当たったときみたいに喜んだ。
「なんで幽霊見たくて喜ぶんだよ。おかしいだろ」
メーイチのツッコミは正しい。ぼくと森さんは笑い合っている。確かにおかしいよねこれ。
「はぁ、変なやつらに付きまとわれたよ。でもさ、藤原さんになんて言えばいいんだよ? 幽霊見たいから鍵を開けてくれって言うの?」
階段を上がりながらメーイチはそう尋ねてきた。
「それに関しては、適当にさ。たとえば、担任の先生へのサプライズプレゼントを作りたいから、あの倉庫を使いたいとかさ」
「よくそんな嘘すぐ思いつくな。なんか森さんのイメージめっちゃ変わったわ」
「ああ、それぼくも思った。森さんって結構お喋りだなって」
「……もう、そんなことどうでもいいでしょ今は」
森さんはなぜか恥ずかしそうにしていた。それが妙に可愛く見えて。
教室が近づいてくる。そのとき、メーイチはぼくらにとって大事なことを呟いた。
「最近さ、おかしなことばっか起こるんだよ。お前らみたいな訳のわかんないことに巻き込まれるわ、変な夢を見るわ、変な白いカードが机の中に入ってるわ」
「え? 今なんて言った?」
ぼくはメーイチの腕を掴む。自分たちの教室が見えているところで、予鈴を聞いた生徒が慌てて教室に入っていく。でもぼくにはそんなことを考える余裕はなかった。
「なんだよ、びっくりすんじゃん」
「今さ、変な夢とか、カードが机の中に入ってたって?」
「え、あー、まあそうなんだよ。たぶん誰かのイタズラだと思うけど」
「そのカードはどうしたの? 今持ってるの?」
森さんも必死だ。
「なんなんだよお前ら。カードはあるよまだ。捨てようと思ってたけど」
「捨てちゃダメ!」
森さんはそう声を出したあと、真剣な目でメーイチを見ていた。後ろから先生が歩いてきて、「お前らなにしてるんだ? 早く教室入りなさい」と言った。振り返って慌てて自分たちのクラスへと入る。その途中でも、森さんはメーイチを見続けていた。
「お前ら、マジで怖いって」
自分の席へ戻る直前、メーイチがそんな言葉を呟いたのが聞こえた。ぼくと森さんは目を合わせる。もう一人の光の同志。ようやくぼくたちは、その一人を見つけたみたいだ。
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