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「す、凄い! 元に戻ってる! これが、魔法なの?」
「ええ、まあ。リストアっていう魔法なんですけどね」
ラバンは驚いた。文字通り、目を丸くして。
「え、でも、なんでこれピンクの花柄なの?」
確かに、四つある椅子の脚の一つだけが薄いピンクの花柄模様に変化していた。
「変な魔法でしょ? 私が使うこのリストアっていう魔法は、壊れたものを元通りにすることができる魔法なんですけど、なぜかピンクの花柄模様になってしまうんです。どうしても可愛くなってしまうのが欠点で」
「でも、この椅子ちゃんと座れるし。ほら、凄いわ」
店主はリルをフォローするように椅子に座ってみせた。
「本当にこれは応急処置です。余裕があるときにちゃんと直してくださいね。一応、耐久性に問題はないと思いますが、やっぱり一つだけ花柄なんて変ですし」
「うん。わかったわ。でも椅子としてちゃんと使えるんだから凄いわ」
店主はリルの両手を握って感謝の意を表した。苦笑いをするだけのリル。その姿を見ながら、ラバンはある考えが頭に浮かぶのを感じていた。
「ラバンさん? どうしたんですか? まだサンドイッチ残ってますよ?」
席に戻ったリルと立ったままジッと動かないラバン。店主も心配そうに彼を見ていた。
「ああ、すまない」
自分の席へ戻り、食事を再開しようとするのだが、やはりまた途中で動きを止めてしまう。
「どこか体調でも悪いんですか?」
そう尋ねられて、ラバンは彼女の顔を見つめた。不思議そうな目をしている。その瞬間、答えが見つかったような気がした。
「いや、そうじゃなくて。なあ、リル」
「はい?」
「食事が終わったら俺の部屋へ来てもらえないか? 話したいことがあるんだ」
それは彼が考え出した結論だった。
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